ここからが、本サイトでの内在者理論の説明の中心になります。少し長くなりますが、じっくりお読みいただけると幸いです。
さて、心には毎日無限ともいえるほどのイメージが蓄積してゆきます。生まれたばかりの赤ん坊にはほとんどなかったはずの色々なイメージが、色々な形で他のイメージにつなぎ止められながら、心に蓄積してゆきます。
たとえば、犬の姿を見て、同時に吠え声を聞いたら、それらはつなげて記憶されます。テーブルや椅子、もっと複雑になると家なども、ひとつのイメージの塊として記憶されるでしょう。こうして個々のイメージは、段々に大きな塊を作ってゆきます。塊同士のつながりもあるでしょう。たとえば、あの家には、あの犬がいるとかです。
このように塊になったりお互いにつながってネットワークを作っているイメージのことを、イメージ情報と呼んでいます。
そのイメージ情報の中で、他とは比較にならないほど大きなイメージの塊を作っているものがあります。それは、人間のイメージ情報です。
赤ん坊は、毎日母親を見つめて育ちますが、当然のように1日として同じ母親はいません。おっぱいを飲ませてくれる母親、自分の名前を呼び、背中をとんとんとたたく母親、だっこし、おむつの世話をしてくれる母親。日によって元気だったり、疲れていたり、にこにこしていたり、不機嫌だったり。人間のイメージ情報は、接する時間が長くなればなるほど、どんどん複雑に巨大になってゆくのです。
この人間のイメージ情報の巨大な塊のことを、統一場心理学では「内在者」と呼んでいます。そして、この内在者の性質について色々と研究したものを「内在者理論」と呼んでいるのです。
内在者は、人と出会う度に、私たちの心の中に生まれます。生まれて間もない時期でも、両親や兄弟、祖父母、近所の人々などと出会い、その内在者が心の中に生まれます。幼稚園に入るころには、友だちとその親、先生など100人を越えるでしょう。小学校、中学、高校、大学、さらに社会人となれば、最低でも数千人、少し多い人は数万人の内在者を、心に持つことになるでしょう。
図2では、前の図1の「イメージ」のところを「内在者」に置き換えています。内在者以外にもイメージ情報はあるのですが、一般のイメージ情報よりも数万倍、あるいはそれ以上に大きく、その数もとても多いので、心の中にあるイメージ情報の大半が、この内在者に関係したものになるからです。
図2:意識と内在者
私たちは、その時々の状況に応じて、内在者から必要なイメージ情報を得て、行動しています。ですから、多くの内在者が緊密なネットワークで結ばれているほど、私たちは心に蓄えられたイメージ情報を自由に使って適切に行動できるようになります。
反対に、内在者を結ぶネットワークが途切れぎみになっていると、意識は上手には移動しにくくなり、必要なイメージ情報を読み取れなくなります。その例を少しだけ説明しましょう。
たとえば、どうしても好きになれない人、思い出すだけでとても嫌な気持ちになり、忘れたいと思うような人がいたとします。その人のイメージ情報から生まれた内在者は、普段のあなたの心(いつも意識の位置しているところ)から、離れ気味になります。そうすると、その「嫌いな人」の内在者に含まれているイメージ情報は、あなたにとって非常に使いにくいものになるのです。 図3にその様子が示されています。
図3:嫌いな内在者
もし学生が、先生や勉強のできる友だちを嫌いになれば、その人たちが持っている能力が使いにくくなります。もし親を嫌いになれば、親の持っている能力が使いにくくなります。自分が誰を嫌っているかを考え、その人のもつ能力を思い起こせば、なぜ不得意な分野があるのかを理解できるかもしれません。
また、上がり症の人がいたとします。多くの場合、上がり症の人は、ここ一番というときに「もっとちゃんとしなければ」「普段の自分ではいけない」などと思いがちです。こんな場合は、図4に示すように、意識は「いつもの自分」から遠く離れている内在者集団に移動してしまっています。こうなると、普段のその人の判断力や、(いつもの自分が)覚えたはずの話す内容など、全てを忘れてしまうので、頭の中が真っ白になってしまい慌ててしまうのです。
図4:特別な内在者
こうした問題は、ある内在者集団が、普段の自分から分離してしまっていることに原因があります。全体がまとまっていれば問題ないのに、普段の自分から「都合が悪い」と感じられる部分を分離してしまったために、心が不便になってしまったのです。
心の問題のほとんどは、こうした構造をもっています。分離した部分の内容によって症状はさまざまですが、その原因となる構造は実は単純なのです。
そこで、こうした問題を解決するためには、とにかく心を統合すればよい ということがわかります。簡単に言ってしまえば、嫌いな人を作らないとか、普段の自分を否定しないとかいうことです。でもそれでは、「わかっているけれどもできない」という壁にぶつかってしまいますね。そこで統一場心理学では、そういった原理をしっかり踏まえたうえで、個々の状況に応じて、具体的かつ実践的な解決策を提示します。