一般的に学童前期とか遊戯期と呼ばれている3〜6歳くらいの期間を、内在者理論では、内在者チームの「一次拡張期」と呼んでいます。初歩的な個人対個人の会話ができるようになり、相手によって行動パターンを変えることができるようになる時期です。
内在者チームの状態で言い表すなら、最低限の機能を備えた内在者チームが、多くの人々に出会うたびに、その構成メンバーを増やしてゆく時期なのです。この時新たな内在者は、既存のどれかの内在者につながり、自我状態のチームに加わる形をとります。全体のチームがいびつになったり、丸くまとまったりする過程を推察することができます。
たとえば、友達のお母さんに出会って、友達→そのお母さん、という結合ができた後で、自分の母親とそのお母さんが一緒に話をしているのを聞いたりすると、友達のお母さんは、自分のお母さんとも結合したイメージになります。更に、自分自身が友達のお母さんと親しく話をすれば、もっと親密な関係になるでしょう。
図5:内在者チームの拡張と人間関係
このように、部分との結合から全体への結合という変化を通じて、私たちは、時間とともに変化する人との距離感を養うことができるのです。心全体に含まれる内在者が少ないので、一つの内在者のあり方の変化が、心全体の大きな出来事として認識されます。そのため、しっかり学習されるので、この時期の人間関係が大切になるわけです。
逆に、もしこの時期に十分な対人関係を経験できないと、後々大人になってからも対人関係で苦労することになるでしょう。人との距離感がつかめないと、私たちは、色々な人との関わりを、上手に進めることができないのです。最近の青少年の中には、他人との距離感をうまくつかめない人が多いようです。このような人の特徴として、普段はかたくなに自分の殻にこもっているのに、突然甘えてきたり、突然告白が始まったりすることがあります。自分が心を開いたことに応えてもらえないと、場合によっては怒りを感じたり、その人の性格によっては、ストーカー的になることも、あるかも知れません。私たちは、どうしたらよいか分からなくなると、怒りを感じやすいのです。
内在者チームの「一時拡張期」の特徴としては、人をほとんどそっくりまねした行動が挙げられます。これは、その行動が、一つ一つの内在者に起因する感情によって支えられているためです。まだ心の複雑なネットワークは出来上がっておらず、内在者の独立性が極めて強いと言えます。
またこの頃、順応自我状態の内在者が増加し、整いはじめます。心の中に複雑な葛藤が始まるので、そのぶつかり合いの中で、周囲の環境に対しての自己認識が始まる時期でもあります。