以上のようにして、私たちの心の中には、私たちの誕生と共に内在者が発生しはじめます。そして心は、私たちが、親の見ていない隣の部屋へ向けて最初の冒険旅行をしはじめる頃には、最低限の機能を備えるようになるのです。これは、一般的に歩行期あるいは幼児期初期と呼ばれている1〜3歳の頃です。
内在者理論では、この時期を内在者の「チーム編成期」と呼んでいます。この時期、最初の内在者チームが生まれ、私たちが行動するための最低限の機能を発揮するようになるのです。多分私たちの動作は、それまでに蓄えた内在者のデータによる、ものまねのつなぎ合わせになるでしょう。
ここではじめに現れるのは、私たちが、「普段の自分」と感じる自我状態の内在者チームです。内在者が、お互いに緊密につながることで全体として統合され、まだ自分という存在をはっきり自覚することもままならぬ状態で、自我状態のチームを形成しはじめるのです。
図3:自我状態の内在者チーム
この時期私たちの関心は、もっぱら自分と外部との関係にあり、その関係をひたすら増やしていくことに熱中します。この頃の特徴は、行動範囲の拡大です。それまで、はいはいをしていた乳児が、自分の足で立つことで、格段に行動範囲を広げることになるのです。はじめて親など他人の監視を免れ、勝手な、そして適度に危険な行動をすることになります。
数々の失敗を通じて、はじめてのことをする危険と勇気を学ぶ時期です。危険と失敗の向こう側に、望む獲物があることを覚える時期でもあります。少し大げさに言うと、人生は、そのものが危険であり、それを乗り越えなければならないということを学ぶのです。
この頃、私たちが、主に伸ばすことのできる能力を、自発行動性と名付けたいと思います。子どもは、何も原因がなくても自分から行動したいと思うものです。そして、その直接的な行動能力を修得するのが、この時期なのです。
もし、あなたのご両親がこのことを学んでいないと、どうなるでしょうか。幼いあなたに、少しの危険も犯させまいとして、一生懸命に気を使うのではないでしょうか。
もし幼児期にあなたの行動範囲の拡大が阻害されるような環境にあると、大人になってから、知らない場所にゆくのにとても苦労したり、行きたくないと感じたりするようになります。行動範囲ばかりではありません。新しいことをするのに、まず人のするのを見てからでないとできなかったり、必要以上に失敗を恐れるようになったりする場合もあります。
3歳までの時期については、次章で更に詳しく述べたいと思います。