心の発生に伴って、もう一つ最も重要な問題が残っています。意識の出現です。
そもそも意識とは、何でしょうか。実はこの問題に適切に答えた心理学は、ほとんど見あたらないように思います。わずかに、禅などの思想の中に、その片鱗を見るのみではないでしょうか。
まず意識には、内容と言えるものは含まれていないと言えます。それは丁度、コンピュータのハードディスクのアクセスポイントのようなものだと考えてよいでしょう。つまり、心に書き込まれたデータを読み進むポイントなのです。内容は、内在者であり、心のデータなのです。
多くの人々は、そうは思っていないかも知れません。確固とした「自分」というものがあり、意識そのものに内容があるように感じているのです。このことが、心の科学の進歩をとても遅らせている、大きな原因になっている可能性もあります。
この問題はとても根元的であり、根元的であるために、考察が困難になっている一面があるでしょう。後にこの問題を詳しく扱いますが、今は以下の働きについての説明に止めたいと思います。
意識には、主に三つの働きがあります。
(1)まず、イメージ情報同士をつなげる働きがあります。一つには外界に注目して、五感を通してイメージ情報を取り入れる働きがあります。このとき、取り入れられたイメージ情報と、既に取り込まれている内在者のイメージ情報とをつなげて記憶します。もう一つは、既に取り込まれているイメージ情報同士をつなげる働きです。私たちが考え事をするときは、既に取り込まれているイメージ情報同士に、少しずつ新しいつながりを形成しているのです。
(2)次に、既に心に取り込まれたイメージ情報を、読み取る働きがあります。色々な記憶を思い出すとき、私たちの意識は、心の中のイメージ情報の間を動きながら、その内容を読み出しているのです。
(3)最後に、意識には物事を実感する働きがあります。これは科学的な方法では解析のできない働きであり、主体としての働きと言い換えることもできるでしょう。