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統一場心理学の少し詳しい説明:第一章 心の発生

第二節 内在者の発生

さて前述のように、個々のイメージが非論理的につながった心は、そのままでは十分な機能を果たすことはできません。では、どのように心は働き始めるのでしょうか。

*母親の内在者

心が発生しはじめた時期に、他のイメージの連鎖とは、様子の異なるものが発生します。それは人間のイメージの連鎖です。人間のイメージの連鎖と物のイメージの連鎖とはどのように違うでしょうか。

たとえば目の前にある机をいくつかのイメージのつながりで認識しているとしましょう。茶色である、平らである、固い、足が4本ある、などです。仮にそのイメージの数を数えられるとしても、それほど多くのイメージ情報はないでしょう。

これに対して、母親に付随するイメージ情報は、どれ程のものがあるでしょうか。たとえば授乳時一つをとっても、乳房の暖かさ、柔らかさ、乳の味、母親の抱いた手や、とんとんと背中をたたく調子など色々なイメージがあり、このイメージ情報は、時間の経過と共にどんどん増えてゆくことになります。母親の笑顔、時に困った顔や怒った顔。優しく、自分の名前を繰り返し呼ぶ声。静かに歌う声。足音。周囲の人と話す声。物のイメージは、時間が経過してもあまり変化しないのに対して、人間のイメージは、会うたびに新たな要素が加わって行く特性があります。

一般的に考えると、人間に付随するイメージ情報と、その他のものに付随するイメージ情報は、その量から考えると、比較にならないほどの差があるのではないでしょうか。厳密な意味では数えることはできないでしょうが、直感的に言うなら、10の3乗か4乗、5乗、或いはそれ以上の差があるかも知れません。

このように、混沌としたイメージの連鎖の中にあって、人のイメージは、圧倒的に多くのイメージ情報が集まった塊を形成してゆくことになります。このイメージ情報の塊を内在者と名付けたいと思います。

図2:イメージの連鎖と内在者図2:イメージの連鎖と内在者

内在者のイメージ情報が持つ最も大きな特徴は、心のデータであると共に、そのデータがあなたの感情や感覚そのものになるということです。コンピュータを例に考えてみましょう。コンピュータ内部の記憶装置に蓄えられているデータを、必要に応じて取り出したり加工するのがプログラムの役目です。それを心に置き換えてみると、心の中に蓄えられたイメージ情報(データ)が、それ自体心を動かしていくようになるということです。あたかも自己増殖するコンピュータ・ソフトのようなもので、外部から得られたデータが、そのままプログラム本体の一部になるのです。

たとえば、あなたがやくざ映画を見に行ったとします。そこで見た映像は、イメージ情報として、あなたの記憶に残ります。ところがそれだけではなく、あなたは、映画館を出るときに、まるでやくざのように肩で風を切って歩いているのです。感じ方でさえ、やくざになったつもりになっています。もちろん、あなたの感性でとらえたやくざですが。

つまり、内在者として蓄えられたイメージ情報は、単なる外部からのデータとしてではなく、それ自体があなたの心の一部として働きはじめるのです。

*内在者の増加と心の発達

内在者は、普通は、母親や父親、兄弟から始まり、祖父母、親戚、近所の人々というように、徐々にその範囲を広げ、数を増加させてゆくことになります。新たな人々に出会うたびに内在者の数が増えてゆき、最終的に、私たちは、何千、何万、ほとんど無数の内在者を、心の中に蓄えることになるのです。多分、人間のイメージほど多くの類似情報を記憶する例は、他にはないでしょう。

その結果、情報の総量を(一人あたりの情報)×(人数)とすると、人間に付随した情報は、相対的に更に増えることになります。つまり、私たちの心にある情報のほとんどは、結果として人間に付随した内在者情報になると言えるわけです。この内在者情報を蓄積しはじめ、私たちの心は、人間の心としての特性を持ちはじめるのです。

さて、この心のはじまりの時期は、一般的には乳児期と呼ばれる0〜10ヶ月、あるいは1年位を言います。内在者理論では、内在者の「発生期」と呼んでいます。

この時期の最大の特徴は、乳児本人に、情報を選択する能力がないということです。まだ、どのような判断をする能力もない、人生で一回限りの特殊な時期なのです。そして、無差別の情報収集ということは、言い換えれば、全ての情報が洗脳の材料になるということです。この時期の環境は、取捨選択されることなく、心を形成する前提条件を作る働きがあり、この前提条件は非常に修正が難しいものになります。

たとえば乳児が、絶えず不快な気分にさせる環境に置かれたとします。すると、自分が生まれてきた世界はとてもひどいところだという、修正できない認識を持つかも知れません。反対に、とても心地よい状況に置かれた乳児は、何もしていないときに無条件の安心感を感じるような心を得ることができるのです。

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作成日:2005-5-6 ©応用心理研究所